メディグルコラム

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2025.06.05

2040年を見据えた新たな地域医療構想

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2040年、団塊ジュニア世代が高齢者となり、日本の高齢化は過去に例を見ないピークを迎えます。これに備えて、地域医療のあり方が大きく変わろうとしています。
これまでの「病床機能の再編・調整」が中心だった地域医療構想は、「地域全体で支え合う仕組み」すなわち“地域完結型”の医療体制の構築へと、大きく舵を切り始めました。

これからの医療には、病院間の明確な役割分担、多職種・多機関連携、在宅医療の充実、ICTの活用など、地域全体を見据えた新たな視点が不可欠です。
そしてそれを現場でどう形にしていくかは、地域医療連携に関わる私たち一人ひとりにかかっています。

本記事では、新たな地域医療構想のポイントと、病院や地域医療連携部門が今から始められる具体的なアクションについて解説します。



1.「新たな地域医療構想」4つの要点

新たな地域医療構想では、これからの医療提供体制に必要とされる4つの重要な方向性が示されています。

限られた医療資源を有効に活用し、「治す医療」と「治し支える医療」の役割を明確に分担するための基本方針です。

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1) 高齢者救急への対応

超高齢社会の進行に伴い、高齢者の救急搬送件数は今後さらに増加が見込まれています。今後求められるのは、単に受け入れるだけでなく、入院初期からリハビリテーションを的確に導入し、可能な限り早期に住み慣れた地域・生活の場へ戻すという考え方です。
さらに、救急搬送や重症化を防ぐ観点からも、在宅医療や高齢者施設と医療機関との連携強化が不可欠です。医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、地域で情報共有し見守る仕組みづくりが欠かせません。

2) 在宅医療の体制づくり

「家で最期まで暮らしたい」というニーズが高まり、在宅医療の需要は今後さらに拡大していくと見込まれます。そのため、医療機関・訪問看護ステーション・訪問介護事業所などが一体となり、24時間対応可能な在宅ケア体制を地域でつくることが必要です。
さらに、医師の負担を軽くしながら質を保つには、オンライン診療の導入、ICTによる情報共有(退院サマリーの共有、モバイルアプリ等)が鍵になります。また、かかりつけ医が「日中の外来」「夜間のフォロー」「健康相談」など幅広い役割を担えるよう支援する体制も重要です。

3) 医療の質向上と人材確保

地域の医療ニーズは多様化・高度化しており、それに応える人材の育成と確保が大きな課題となっています。今後は、医療機能を集約することで教育・研修機会を充実させ、医師や看護師のスキル向上を図るとともに、働き方改革を推進することが重要です。
特に、急性期・救急医療を担う医師の確保やチーム医療の強化を通じて、質の高い医療サービスを継続的に提供する体制を整備することが求められます。

4) 地域に必要な医療提供体制の維持

人口減少と高齢化の進行に伴い、地域における医療人材の確保がますます困難になっていくことが予想されます。これに対応するためには、医療DXの推進やタスクシフト・タスクシェアによる業務の効率化を図り、限られた人材で医療機能を持続可能な形で維持することが重要です。
特に医師の偏在が深刻な過疎地域では、拠点病院からの医師派遣、巡回診療、さらにはICTを活用した遠隔医療の導入など、地域の特性に応じた柔軟な取り組みが必要不可欠です。

2. 従来の地域医療構想との違い

従来の地域医療構想は、病床機能の分化と病床数の調整が中心で、2025年に向けて病床削減と機能再編が進められてきました。しかし、外来医療や在宅医療、介護との連携には十分な重点が置かれていなかった点が課題でした。
一方、新たな地域医療構想では、医療提供体制全体の見直しを図り、外来医療・在宅医療の充実、医療の質向上、人材確保まで含めたより包括的なアプローチが求められています。

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3.今から取り組めるアクション

新たな地域医療構想では、「限られた医療資源を地域でどう最適に活用するか」が中心テーマです。 人口減少・高齢化が進む中、医療機関がそれぞれの役割を果たし、連携によって地域全体で患者を支える体制づくりが求められます。
その中で、地域医療連携室の役割はこれまで以上に重要になります。
以下の3つの視点から、今から取り組めるアクションをご紹介します。

1) 地域医療の再編に関する体制構築

機能分化・役割分担を地域全体で明確にし、シームレスな医療提供体制を実現する。

具体的なアクション例
・自院の医療機能や地域内での立ち位置を整理し、院内外で共有できる資料を作成。
・地域医療構想調整会議の議事内容や構想区域内の動向を定期的に収集・共有し、職員の共通理解を図る。
・紹介・逆紹介データを月次で集計・分析し、連携先との関係性や流れを可視化。関係性の見直しや新規連携の提案につなげる。

2)在宅医療への円滑な移行と情報連携の強化 

退院支援から在宅医療へのつなぎをスムーズにし、在宅療養を支える多職種との連携を強化する。

具体的なアクション例
・訪問診療・訪問看護事業所と定期的な情報共有会(年2〜4回)を開催・調整し、患者対応のすり合わせや連携の質を向上させる。
・退院支援業務において、在宅医療移行の必要性や希望を可視化するチェックリストを整備し、情報共有の質を高める。
・退院サマリーや医療情報提供書をICTツール(地域連携ネットワークなど)を活用して送信する体制を整え、情報伝達の効率化を図る。

・地域ケア会議や医療介護連携会議等の場で、ICT連携の好事例を紹介・展開し、地域全体の情報共有体制を成熟させる。

3)院内のDX推進

 ICTの利活用によって地域との連携効率を高め、医療の質向上と職員の業務負担軽減を両立する。

具体的なアクション例
・地域連携ツールを活用し、紹介元・紹介先との情報共有を円滑に行う。活用状況を定期的に把握し、活用が進んでいない職種・部署に対して説明やフォローを実施。
・院内のICTに関する課題を共有する定例ミーティングを設置。現場からの課題や改善要望を集め、DX推進チームと連携。
・紹介状・退院サマリーのAIツール導入、またはテンプレートを整備・普及。医師や事務職員向けに使い方マニュアルと説明会を実施。入力の効率化と標準化を図る。

ご紹介したアクションは、あくまで一例ですが、「見える化」「つなぐ」「共有する」といった視点を持ち、地域の関係機関と協調しながら一歩ずつ取り組んでいくことが、持続可能な体制づくりにつながるのではないでしょうか。
それぞれの地域・病院の状況に合わせて、できるところから取り組みを始めていただくヒントとして、お役立ていただければ幸いです。

4. 「新たな地域医療構想」のスケジュール

    2025年度に新たな地域医療構想のガイドラインが作成され、2026年度に都道府県による病床数推計と医療提供体制の方向性の検討・策定、2027年から医療機関の連携・再編・集約化についての協議が進むとされています。
    したがって、2026年度までは現行構想を継続しつつ、次期体制への準備を着実に進める必要があります。

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    5.最後に

    2025年以降の地域医療構想は、単なる制度変更ではなく、「限られた医療資源を最大限に活かす」ための大きな転換点です。
    地域医療連携室には、病院と地域、医療と介護、対面とICTをつなぐ“架け橋”として、これまで以上に実務的かつ戦略的な役割が求められています。

    地域の特性や課題に応じた柔軟な対応、病院間や在宅医療とのスムーズな連携、ICTの活用、医療資源の可視化といった日々の積み重ねが、新たな構想の実現に直結します。

    情報共有や連携の進め方でお困りのことがあれば、他地域の事例や具体的な支援策もご紹介可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

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