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2026.10.17

地域医療構想策定ガイドラインと地域医療連携室 2028年度までの協議に備える

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団塊の世代が後期高齢者となった2025年以降、2040年に向けて、高齢者救急や在宅医療の需要が増加する一方、急性期医療の需要は多くの地域で減少することが見込まれています。

こうした変化を見据えた新たな地域医療構想について、2026年3月19日に検討会の「とりまとめ」が取りまとめられ、同年7月3日には、都道府県が構想を策定する際の考え方と進め方を示した「地域医療構想策定ガイドライン」が厚生労働省から発出されました。

地域医療構想は2028年度までに策定することとされており、ガイドラインでは、急性期拠点機能を担う具体的な医療機関名も含めて地域で協議し、構想を策定する流れが示されています。

どの病院がどの役割を担うかが具体的になっていくことは、紹介・逆紹介や転院の調整、退院支援を担う地域医療連携室の業務にも関わってくるでしょう。

では、ガイドラインのどこに注目すれば、地域医療連携室としての備えにつながるのでしょうか。

本コラムでは、地域医療構想策定ガイドラインと検討会のとりまとめをもとに、2028年度までの策定スケジュール、医療機関機能の考え方、そして救急搬送や退院支援など地域医療連携室の業務に関わる協議事項について解説していきます。

この記事のポイント

  • 地域医療構想策定ガイドラインは2026年7月3日に発出され、地域医療構想は2028年度までに策定することとされています。
  • 各医療機関は2040年に担う医療機関機能を報告し、遅くとも2028年度までに地域の協議を経て決定します。
  • ガイドラインでは、下り搬送・上り搬送や転院搬送のルール作りと、介護保険施設との退院連携が重要とされています。

1.地域医療構想策定ガイドラインの位置づけとスケジュール

まず、ガイドラインがどのような経緯で示されたものなのか、そして2028年度までにどのような流れで地域医療構想が策定されるのかを確認します。

1)とりまとめからガイドラインへ

新たな地域医療構想については、地域医療構想及び医療計画等に関する検討会が2026年3月19日に「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」を取りまとめ、同月に開催された社会保障審議会医療部会で審議・承認されました。

その内容を踏まえ、2026年7月3日付の厚生労働省医政局長通知の別添として発出されたのが「地域医療構想策定ガイドライン」です。

ガイドラインは、都道府県が2040年に向けた新たな地域医療構想を策定・推進するにあたっての、基本的な考え方と具体的な進め方を示したものです。

また、とりまとめでは、今後、地域医療構想は医療計画の上位概念として位置付けられることとなるとされています。

各都道府県での協議は、このガイドラインを参考に進められていくと考えられます。

自院の地域で今後どのような議論が行われるのかを知るうえでも、目を通しておきたい資料と言えるでしょう。

2)2028年度までの策定スケジュール

改正医療法において、地域医療構想は2028年度までに策定することとされています。ガイドラインでは、それまでの進め方が次のように示されています。

・2026年度から2027年度上半期頃まで:

医療需要の見通しや医療提供体制の現状等について、客観的なデータに基づく分析を行い、地域医療構想調整会議でデータに基づく議論、課題の整理、構想区域の点検・見直しを行う

・2028年度まで:

急性期拠点機能を担う医療機関の具体的な医療機関名も含め、2040年に各医療機関が担う医療機関機能、2040年の必要病床数、入院医療・外来医療・在宅医療・介護との連携・人材確保に関する取組を協議し、地域医療構想として策定する

その後は、2029年度頃に第9次医療計画を策定し、2035年頃には医療機関機能の役割分担等について一定の成果を確保するスケジュールとされています。

スケジュールに照らすと、2026年10月現在はデータに基づく現状把握と課題整理の段階にあたると言えます。

協議は、都道府県単位と構想区域単位のそれぞれに設置される地域医療構想調整会議で進められます。

また、現状の把握、課題の整理、対応案の検討・決定の各段階で、検討内容や方向性を整理した案を、地域住民も含め広く共有できる形で公表するとされています。

2.4つの医療機関機能と報告の考え方

新たな地域医療構想では、各医療機関が医療機関機能報告で報告する「医療機関機能」をもとに、地域での役割分担が協議されます。

ここでは、その機能の種類と、報告から決定までの流れを整理します。

1)地域で確保する4つの機能

ガイドラインでは、地域ごとに確保する医療機関機能として、次の4つが示されています。

・高齢者救急・地域急性期機能:

高齢者をはじめとした救急搬送を受け入れるとともに、入院早期からのリハビリテーション・退院調整等を行い、早期の退院につなげ、退院後のリハビリテーション等の提供を確保する
・急性期拠点機能:

手術や救急医療等の医療資源を多く要する症例を集約化した医療提供を行う
・在宅医療等連携機能:

地域での在宅医療の実施、他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間の対応や入院対応を行う
・専門等機能:

上記3つにあてはまらない、集中的なリハビリテーション、中長期にわたる入院医療、有床診療所が担う地域に根ざした診療、一部の診療科に特化し地域ニーズに応じた診療を行う

このほか、大学病院本院は、地域ごとに確保する医療機関機能ではなく、「医育及び広域診療機能」のみを報告するとされています。

なかでも急性期拠点機能は、人口の少ない地域では一つ確保・維持し、地方都市型や大都市型の地域では人口20万人から30万人の単位で一つ確保することが基本的な考え方とされています。

地域の中で急性期拠点機能を担う病院は絞り込まれていくことになるでしょう。

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2)報告から決定までの流れ

各医療機関は、まず自ら検討を行ったうえで、現在担っている機能に近い医療機関機能、2040年において担う医療機関機能、診療実績等を医療機関機能報告で報告します。

その後、地域医療構想調整会議で診療実績等の客観的なデータも踏まえて協議し、遅くとも2028年度までに、各医療機関が2040年において担う医療機関機能を決定します。

報告にあたっての考え方として、ガイドラインでは次の点が示されています。

・医療機関機能は、診療報酬上の入院料の種類等のみをもって機械的に決定されるものではない
・高齢者救急・地域急性期機能と急性期拠点機能は、両機能を一つの医療機関が報告することはしない
・救急搬送受入件数が多いことのみをもって、急性期拠点機能を担う医療機関を決定することは適切ではない

自院がどの機能を報告するかは、病院としての経営判断にあたる事項です。

一方で、地域のどの病院がどの機能を担うかは、紹介・逆紹介や転院の相談先を考えるうえでの前提になります。

自院だけでなく、主な連携先がどの機能を担う方向にあるのかも、地域医療連携室として把握しておきたい情報と言えるでしょう。

3.地域医療連携室の業務に関わる協議事項

ガイドラインには、入院医療、外来医療、在宅医療、介護との連携、人材確保など、幅広い協議事項が示されています。

ここでは、そのうち地域医療連携室の日々の業務と特に関わりが深いと考えられる3つのテーマを取り上げます。

1)下り搬送・上り搬送と転院搬送のルール作り

ガイドラインでは、高齢者救急を含めた救急搬送の需要を受け止める体制の整備に向け、救急車の適時・適切な利用や受入時の役割分担、受入直後の下り搬送・上り搬送及び急性期を経過した後の転院搬送に係るルール作りが重要であるとされています。

具体的には、次のような連携体制の整備が重要とされています。

・急性期拠点機能を担う医療機関で救急車を受け入れた後、自施設での医療提供を必ずしも要さないと判断された患者を、高齢者救急・地域急性期機能を担う医療機関へ下り搬送する
・高齢者救急・地域急性期機能を担う医療機関で対応が困難な救急搬送患者を、急性期拠点機能を担う医療機関へ上り搬送する
・急性期の治療を終えてもなお退院が困難な患者について、他の医療機関等へ転院搬送を行う

あわせて、高齢者救急・地域急性期機能を担う医療機関には、急性期拠点機能を担う医療機関と連携しながら地域での協議に積極的に関与し、搬送先の選定にあたっての考え方や、下り搬送、上り搬送を含めた受け入れ後の連携のあり方等を具体化していくことが求められています。

下り搬送や転院の調整は、受け入れ先との日頃の関係づくりが土台になる業務です。

地域でルールが具体化していく過程では、連携室が持つ連携先の情報や調整の経験が生かせる場面も多いと考えられます。

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2)介護保険施設との連携による早期退院

ガイドラインでは、高齢者救急の増加に伴い、退院後の受け皿として介護保険施設や居宅サービスを適切に活用できる体制を整備することが重要とされています。

そのため、医療機関と介護保険施設との間で、介護老人保健施設、介護医療院等の役割や機能の理解を共有し、退院支援及び退院後の受入れに関する連携を進める必要があるとしています。

地域で進める取組の例としては、次のようなものが挙げられています。

・介護保険施設における医療提供やリハビリテーション等の機能について、地域の関係者が理解を深める場を設定する
・医療機関と介護保険施設との間で、入院中の患者の状態像や、介護保険施設側で受入可能な状態(例えば、酸素療法が実施可能など)等を整理し、地域で共有する
・退院時の医療機関と介護保険施設の実際の連携事例について、具体的なタイムスケジュールや情報連携の内容等を含め、地域で共有する

介護保険施設ごとに受け入れ可能な患者の状態を把握しておくことは、退院調整の進めやすさにも関わります。

地域での共有が進むのを待つだけでなく、自院として退院先となる施設の情報を整理しておくことも、早期退院への備えになるでしょう。

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3)在宅医療のバックベッドと平時からの情報共有

在宅医療等連携機能を担う医療機関には、次のような役割が考えられるとされています。

・急変時に入院対応が必要な患者の受入先として、バックベッドを確保する
・連携する診療所等との定期的なカンファレンスを開催し、患者情報を共有するとともに、休日・夜間等の連携体制を構築する

また、高齢者施設の入所者の状態悪化時に適切な介入を行えるよう、協力医療機関の確保、平時からの医療と介護の情報共有、受診及び搬送のルールの整理等について協議することが重要とされています。

さらに、退院支援、在宅療養の継続、急変時対応、看取り対応、施設入所等について、どのような場面でどの関係者がどの役割を担うかを整理することも重要とされています。

入院の受け入れから退院後の生活までを地域でつなぐこれらの取組は、前方連携と後方連携の両方を担う地域医療連携室の業務と重なる部分が大きいと言えるでしょう。

ここで、救急搬送の受け入れ後の連携と、退院先となる介護施設の情報整備に取り組まれてきた病院の事例をご紹介します。

<事例>下り搬送の体制強化と介護施設情報の整備

ベルランド総合病院様

ベルランド総合病院様は、大阪府堺市にある477床の急性期病院です。

“断らない医療”を実践し、救急搬送を月間1000件以上(地域最多)受け入れています(2024年4月公開の導入事例時点)。

毎日多数の患者さんの紹介先となる医療機関を、1つずつネットで検索しており非効率だったことが課題でした。
メディグルの導入を前提として、下り搬送の体制強化のために総合急病救急センターにMSWを配置されました。

また、医療福祉相談室(MSW)が介護施設検索に各施設の自費サービス価格表や担当者の名刺を貼り付け、必要な情報をすぐに確認できるようにされています。

事例全文はこちら >> 「”断らない医療”の裏側を支える。業務効率化と情報共有による、院内体制と地域連携の強化」

4.2040年に向けた協議を連携室の視点で捉える

地域医療構想策定ガイドラインの発出により、新たな地域医療構想は2028年度までの策定に向けて、具体的な協議の段階に入りました。

2026年度から2027年度上半期頃にかけてはデータに基づく現状把握と課題整理が進められ、2028年度までに、急性期拠点機能を担う医療機関名も含めた医療機関機能や必要病床数、入院医療・外来医療・在宅医療・介護との連携・人材確保に関する取組が協議されていきます。

医療機関ごとの役割分担が明確になっていくことは、地域の中で患者さんを受け渡す連携の流れが、これまで以上に問われることでもあると言えます。

調整会議での議論を病院経営の話題としてだけでなく、日々の紹介・転院・退院調整に関わる話題として捉えておくことが、これからの地域医療連携室に求められるのではないでしょうか。

メディグルでは、地域医療連携から医療のしくみをより良いものにしていくことを目指しています。

地域医療連携に関わるお悩みがあれば、メディグルがトータルでサポートいたします。お気軽にご相談ください。

今から取り組めること
・自院がある都道府県のホームページで、地域医療構想調整会議の資料や公表されている案を確認してみましょう
・主な紹介先・転院先の医療機関がどの医療機関機能を担う方向にあるか、公表資料や訪問の機会を通じて把握してみてはいかがでしょうか
・下り搬送や転院で受け入れを依頼している医療機関と、受け入れまでの流れや情報のやりとりを振り返ってみましょう
・退院先となる介護老人保健施設・介護医療院・特別養護老人ホームについて、受け入れ可能な状態や連絡先を一覧に整理しておきましょう
・自院が報告する医療機関機能について、経営企画部門などと情報を共有する機会を設けてみてはいかがでしょうか

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